Sobre Todaii Japanese
Rede Social
Versão do App
Outros Apps
Direitos autorais pertencem à eUp Technology JSC
Copyright@2025
JLPT N1 – Reading Exercise 82
建築けんちくの設計せっけいをやっていると様々さまざまな職人しょくにんに出会であう。大小だいしょうを問とわずどの現場げんばでも一人ひとりや二人ふたり、主役しゅやくを張はれる人ひとがいる。そうした人ひとに出会であうのが、現場げんばに通かよう楽したのみのひとつだ。長ながい時間じかん、図面ずめんにばかり接せっしていると、現実げんじつを離はなれて思考しこうが一人歩ひとりあるきすることがよくある。そんな時とき、かれらからもらう情報じょうほうがかけがえのないものであることが分わかる。我々われわれが作つくり出だす図面ずめんは、線せんで描かかれた抽象的ちゅうしょうてきな記号きごうに過すぎない。かれらは物ものに触ふっている。経験則けいけんそくによって裏付うらづけられた、物ものに近ちかい、深ふかくて確たしかな情報じょうほうを持もっている。図面ずめんは人間にんげんの頭あたまの中なかだけで作つくり出だされたものだ。それを現実げんじつの建物たてものに移うつし替かえるには、木きや鉄てつやコン{クリート}といった、物ものから手てによって直接ちょくせつに得えられる情報じょうほうが不可欠ふかけつだ。頭あたまで生うみ出だされたものは、思おもいこみや錯誤さくごによって間違まちがうことが多おおいからだ。今いまはコンピューターと情報通信じょうほうつうしんの時代じだいだ。それにともなって、手てを動うごかす機会きかいがどんどん少すくなくなってきている。建築けんちくの設計せっけいでもCAD(コンピューター利用りよう設計せっけい)化かの勢いきおいはすさまじい。しかし、その図面ずめんは、設計せっけいの全体ぜんたいを把握はあくしにくい。きれい過すぎて、何なにであれ、すべてうまくいっているように見みえてしまう。手てを経へずに、頭あたまの中なかだけで作業さぎょうが完結かんけつしてしまっているからだろう。トレーシングペーパーに鉛筆えんぴつで苦労くろうをして描かかれた旧来きゅうらいの図面ずめんは、そこに描かく人ひとの感情かんじょうが入はいっている。うまくいっていないところは消けしゴムで消けし、描かき直なおして修正しゅうせいしていく。技術的ぎじゅつてきに問題もんだいのあるところ、デザイン的てきにうまくいっていないところほど、線せんはにじみ、トレーシングペーパーは人ひとの手ての脂あぶらで汚よごれてくる。何回なんかいも描かき直なおした個所かしょは、しまいには擦すり切きれて穴あなが開あいてしまうこともある。描かいた当人とうにんの自信じしんがなければ、鉛筆えんぴつの線せんにもその迷まよいを見みて取とることもできる。慣なれてくると、図面ずめん上じょうの線せんから、描かいた人ひとの経験的けいけんてきなレベルや人柄ひとがらさえ分わかるようになる。手書てがきの図面ずめんには、すてがたい様々さまざまな種類しゅるいの情報じょうほうが塗ぬり込こめられている。均質きんしつな図面ずめんの向むこう側がわに人ひとの姿すがたが見みえにくい分ぶん、CADでは大おおきなリスクを見落みおとす可能性かのうせいもある。手てから遠とおいコンピューターの出現しゅつげんによって、リスクの所在しょざいをかぎ取とることが、旧来きゅうらいの経験けいけん側がわでは難むずかしくなってきている。これは設計せっけいに限かぎったことではないだろう。今いまや情報通信じょうほうつうしんとコンピューターはあらゆる分野ぶんやに浸透しんとうし、社会しゃかい全体ぜんたいを変かえつつある。頭あたまから生うみ出だされたものが暴走ぼうそうしている。リスクの所在しょざいが、より巨大きょだいで、見みえにくくなった。どこかでそれを、生身なまみの身体からだを持もつ人間にんげんの側がわに引ひき戻もどす必要ひつようがある。手てから得えられる情報じょうほうは、効率こうりつは悪わるいが、現実げんじつの世界せかいをまさぐって得えられるものだ。その人ひとの身体からだだけにとどまる固有こゆうに情報じょうほうといってもよい。忘わすれられつつある手ての行いき場ばを考かんがえるべきだろう。(内藤ないとう廣ひろし『建築けんちくのはじまりに向むかって』による