昔、飛騨の山の中での話です。秋の終わり、ある男が山道で倒れていました。そこに百姓の金衛門が通りました。倒れていた男は、たくさんの人を殺した罪人で、江戸から逃げてきたと言いました。金衛門はその男に水を飲ませました。男は「ありがとう」と言って、すぐに死んでしまいました。金衛門は男を土に埋めて、ていねいにお葬式をしました。
その年は、夏から食べ物がなくなり、百姓たちがたくさん反乱を起こしました。リーダーたちはみんな殺されてしまいました。
次の年の初夏の夜、金衛門の家の前でたくさんの足音や車の音が聞こえました。金衛門が外を見ると、橋の近くに火の玉が見えました。その音は毎晩続きました。家では水が急に出たり、お米がこぼれたり、子どもが空に浮いたりする不思議なことが起きました。妻は怖くて寝込んでしまいました。
ある夜、外から「金衛門さん…」という声がしました。見ると、水を飲ませた罪人の幽霊が立っていました。幽霊は「早くここから引っ越してください。ここは亡者が通る道です」と言って消えました。金衛門がよく見ると、家の中や橋の上にたくさんの幽霊が歩いていました。金衛門の家は、亡者が地獄へ行く道の上にあったのです。
金衛門は家を橋から遠いところに移しました。そして橋の近くにお墓を作り、亡者の霊をていねいにお祈りしました。